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「お通夜状態」の現場を救うのは技術じゃない?炎上案件で私が最初に着手したこと
これは、私がある「炎上案件」の火消しを任されたときの実体験です。
ある日のこと、私は上長に呼び出され、こう告げられました。
「あ~、現場ゴリラ君。突然なんだけど、今このプロジェクトがかなりマズい状況なんだ。すぐに応援に入ってくれないか?」
この業界では珍しくない話ではありますが、胸をよぎった嫌な予感は的中しました。アサインされてすぐにチームミーティングへ参加したのですが、そこで私が真っ先に感じたのは、技術的な課題以前の「違和感」でした。
「……なんだか、現場の雰囲気が異様に暗いな」
トラブルの渦中にあり、全員が疲弊しているのは理解できます。しかし、プロジェクトを牽引すべきリーダーやプロジェクトマネージャー(PM)までもが、まるでお通夜のような空気になっていたのです。
これは非常に危険な兆候です。
なぜなら、トラブルが発生しているときほど、チームの雰囲気を立て直さなければなりません。心理的な余裕がなくなると、普段はしないようなケアレスミスを連発し、組織としての結束も崩壊してしまうからです。
私がその現場で最初に行った施策は、意外にもITスキルとは無縁の「雰囲気改善」でした。
IT企業らしからぬ、非常にアナログなアプローチかもしれません。しかし、システムを動かす人間自体が感情で動く「アナログな生き物」である以上、この部分の改善はプロジェクト立て直しにおける最優先事項なのです。
沈黙を破る「アイスブレイク」の魔法──なぜ、いきなり仕事の話をしてはいけないのか?
どん底まで沈み込んでいるチームには、共通して「重苦しく硬い空気」が漂っています。そして、現場の立て直しに失敗しているケースでは、決まって最初から「あるミス」を犯しているのです。
それは、ミーティングが始まった瞬間に「いきなり仕事の話を始めてしまうこと」です。
一見、効率的に思えるかもしれません。しかし、これをやってしまうと、会議の冒頭から最後まで張り詰めた緊張感が支配することになります。結果として、「こんなこと相談しても大丈夫かな?」という心理的な壁が生まれ、重要な相談が上がってこない、最悪の雰囲気になってしまうのです。
ミーティングは単なる「報告」の場ではなく、課題を出し合う「相談」の場でもあります。だからこそ、どんなに多忙で時間が惜しくても、必ず冒頭にこれを取り入れてください。
それが、「アイスブレイク」です。
アイスブレイクとは、会議の冒頭で参加者の緊張を解きほぐし、和やかな空気を作ることで、活発な議論を促す技術です。
単に場を和ませるだけではありません。アイスブレイクには、マネジメントにおいて非常に重要な3つの役割があります。
心理的な距離の短縮: メンバー間の壁を取り払い、信頼関係を築くきっかけを作る。
コンディションの把握: メンバーの声色や会話のトーンから、メンタル面や体調に異変がないかを確認する。
ヒューマンスキルの発揮: リーダーには、技術的なスキル以上に、こうした人間力(ヒューマンスキル)が求められます。
「そんなの難しそうだ」と感じるかもしれません。しかし、決して難しいことではないのです。
その日のニュースや天気、あるいは各メンバーの趣味など、他愛もない話題で1〜3分ほど雑談をするだけで十分です。ときには笑いが起きるようなネタを振ってみるのもいいでしょう。
こうして会話を重ねることで、メンバーの健康状態やメンタルの変化を自然と把握できるようになります。その結果、不測の事態が起きる前に問題を吸い上げ、上長へのエスカレーションや対策の検討といった「先手」を打つことが可能になるのです。
PM不在の現場で私が下した決断──機能不全の組織を立て直す「巻き取り」の技術
会議の場において、私が常に意識していることがあります。
それは、発言していないメンバーにも話題を振り、議論の輪へ加わるよう誘導することです。これは冒頭のアイスブレイクでも同様です。
リーダーやマネージャーにとって最も重要な任務は、各メンバーの状態を正確に把握することにあります。これは、パフォーマンスが下がったメンバーを問い詰めるためではありません。その「原因」を探り、チーム全体が抱える真の問題を特定するためです。
今回の炎上案件において、チームリーダーと対話を重ねる中で見えてきたのは、目を疑うような惨状でした。
PM(プロジェクトマネージャー)の機能不全
年末年始を前提とした無謀なスケジュール作成
見積もりの甘さにより、実際の修正量が想定の3倍以上に膨張
無理な稼働による体調不良者の続出
そもそも、年末年始を工程に組み込むこと自体が、プロジェクト管理として致命的なミスです。しかも、これはPMが周囲に相談せず独断で決めたものでした。すでにリカバリーできる限界を優に超えていたのです。
では、なぜここまで炎上するまで放置されていたのか。
破綻したプロジェクトほど、目の前の作業に追われて「エスカレーション(上長への報告)」をする暇すらなくなります。しかし最大の要因は、やはりPMが機能していなかった点にありました。
もちろん、そのPM個人だけが悪いわけではありません。彼はキャパシティを超える複数の案件を抱え、作業に忙殺されていました。「できない」と断りきれず、無理に引き受けてしまうワーカーホリックな気質も、周囲に深刻な影響を与えていたのです。
この危機的状況を打破するため、私はある強硬策に出ました。
**「プロジェクトマネージャーの役割を、私がすべて巻き取る」**という決断です。
具体的には、以下の施策を即座に実行しました。
会議のファシリテーションの主導: 進行をすべて担い、「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」が滞りなく流れる仕組みを構築。
情報の可視化(毎日レポート): 何が問題なのかを顕在化させるため、全メンバーに状況を毎日共有。
タスク管理の徹底: テストの進捗が視覚的に分かるよう、私が直接タスクの消込処理を実施。
リソースの確保とアサイン: 不足しているメンバーを各所からかき集め、テストを回せる体制を再構築。
仕事として完遂させるため、ときには頭を下げて周りにお願いして回ることもありました。そして会議の場では、決して暗くならないよう、私自身が誰よりも元気に、明るく振る舞い続けました。
その結果、お陰様で不可能だと思われていたスケジュールを軌道修正し、無事にプロジェクトを完遂させることができたのです。
プロジェクトを完遂させるために、PMが忘れてはならない「本当の役割」
最後に、私が大切にしているいくつかの考え方をお話ししたいと思います。
まず、プロジェクトが炎上している真っ最中に、どれほど腹が立っていても、決して誰かを責めてはいけません。
これまで私は、現場で正論ばかりを吐き続け、チームをさらに崩壊させてしまう「正論モンスター」を数多く見てきました。
しかし、振り返りや再発防止策といったものは、炎上中に議論すべきことではありません。
リーダーやPMが最優先すべきなのは、「今、この場をいかにして収め、リカバリーさせるか」の一点に注力することです。
説教や犯人探しは後回しで構いません。
あなたのミッションは、与えられたロール(役割)としてプロジェクトを成功に導くこと、ただそれだけだからです。
そしてもう一つ。これは炎上中に限らず、私がどんなときでも欠かさず行っていることがあります。
それは、「感謝を伝えること」です。
「何を当たり前のことを」と思うかもしれません。
しかし、面白いことに、これができない人は大勢います。
何かをしてもらったら、必ず「ありがとう」と言葉に出して伝えましょう。
心の中で思っていても、相手に伝わらなければ意味がありません。
また、仕事を依頼するときも、上下関係に関わらず丁寧にお願いすることを徹底しましょう。
相手が仕事をしやすくなるよう、背景を丁寧に説明し、準備を整えてから振る。
これもまた、できていない人が多い重要なスキルです。
私はかつて外資系企業に身を置いていたため、多くの外国人の同僚と接してきました。
そこでは曖昧な指示は一切通用しません。
確実に意図が伝わるようドキュメントを用意し、丁寧に説明した上で動いてもらう必要がありました。
特に海外の方は、自分のロール以外の仕事は引き受けませんし、無理なものははっきりと断ります。
私はそれが本来の姿だと考えています。
日本企業ではこのあたりの境界線が曖昧なため、よくトラブルに発展します。
ひどいケースでは、本来の役割以上の仕事を勝手に進め、「自分は100点だ」と主張する人もいます。
しかし、それでは組織としての管理が成り立ちません。
さらに、苦笑いするしかないのが「当たり前」を押し付けてくるマネージャーです。
当たり前の基準は、人によって異なります。生まれ育った環境も、教育も、経験してきたキャリアも全員違うからです。
そんな曖昧なものに頼るのではなく、ルールをきちんと明文化し、丁寧に伝える。
そして、周囲には常に敬意を持って接し、信頼される人間性——いわばカリスマ性を磨くことが不可欠です。
人を惹きつける能力がなければ、リーダーやマネージャーを全うするのは難しいでしょう。
「ITスキル」と「マネジメントスキル」を混同している人もいますが、これらは全く別のスキルです。名選手が必ずしも名監督になれるわけではないのと同様に、PMにはPMとしての「人間力」が求められるのです。
PMは孤独な仕事です。心折れそうな夜は、このアイテムで自分を労ってください。
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